新しいランニングシューズを履いたら、足首や膝がねじれるように感じる。 大きめのシューズを履くと、着地した瞬間に身体が横へ倒れる。 ストレッチやマッサージをしても、膝の裏やすねの外側の痛みが変わらない。 その原因の一つとして、このページでは「シューズの角当たり」を考えます。 シューズの角当たりとは、人の踵が地面へ着く前に、シューズの踵部分にある外側や後方の角が接地し、シューズが意図しない方向へ倒れる現象です。 クッション性だけではなく、踵の形状、シューズの大きさ、足の固定、ソールの曲がり方を一緒に確認します。
シューズの角当たりとは、踵の外側や後方の角が先に地面へ触れる現象です
人の踵は、本来、丸みを持った形をしています。 歩いたり走ったりするときは、踵の丸い面が地面へ触れ、その丸みに沿って身体が前方へ移動します。 一方、多くのランニングシューズは、クッション性や安定性を作るため、人の踵よりも幅が広く、後方へ張り出した形をしています。 そのため着地の仕方によっては、人の踵が接地する前に、シューズの外側や後方の角が地面へ触れます。 シューズが前方へ滑らかに転がらず、横方向へ急に傾く状態を、このページでは「シューズの角当たり」と呼んでいます。
シューズの角当たりは、一般的な医学用語ではありません。 シューズの踵が足より先に接地し、シューズが横へ倒れる現象を説明するため、まぼろし工房で使用している呼び方です。
人の踵は、丸みを使って身体を前へ運びます
踵の丸みは、ヒールロッカーとして働きます
踵が地面へ着いたあと、身体は踵の丸みに沿って前方へ移動します。 この仕組みをヒールロッカーと呼びます。 ヒールロッカーは、身体の中に独立した関節があるわけではありません。 踵の丸い形と地面との接触によって作られるため、外部関節とも表現されます。 踵が適切な場所へ接地すると、身体は踵を支点として滑らかに前へ進みます。
👉️ヒールロッカーとは|踵を支点に身体が前へ進む仕組み
厚い踵には、衝撃を吸収する役割があります
ランニングシューズは、クッション性、安定性、推進力などを作るために設計されています。 特に踵の厚いシューズには、着地時の衝撃を緩和するという利点があります。 そのため、踵が厚いことや幅が広いこと自体が、問題というわけではありません。 大切なのは、その形状が走る人の接地位置や体重、足の大きさと合っているかです。
シューズの角が先に接地すると、前方への回転が横方向の傾きへ変わります
シューズの踵の角が先に地面へ触れると、人の踵を支点にしたヒールロッカーが始まりにくくなります。 前方へ滑らかに転がるはずだったシューズが、外側の角を支点にして横方向へ傾くことがあります。 このページで観察している角当たりでは、次のような運動連鎖が起こります。 シューズの外側の角が接地する ↓ シューズが横方向へ傾く ↓ シューズの中で踵が斜めに倒れる ↓ 足首とすねの向きが変わる ↓ 膝へねじれが伝わる この変化は、一歩だけでは小さく見えます。 しかし、歩行やランニングでは同じ接地を何度も繰り返すため、足首、すね、膝の同じ場所へ負担が集まります。
小さな傾きは、走っている本人が気づきにくい変化です
大きく足首をひねれば、捻挫をしたことに気づきます。 一方、着地のたびにシューズが少しだけ横へ傾く状態では、本人が違和感を覚えないこともあります。 走行中は着地ごとに大きな荷重が加わります。 小さなねじれでも繰り返されれば、膝の裏、すねの外側、足首などへ負担が集まることがあります。
大きすぎるシューズは、角が接地する位置を後方へずらします
足より大きなシューズを履くと、シューズの踵は人の踵よりも後方へ張り出します。 その結果、シューズの角が地面へ触れる位置も、本来の踵の接地点より後方や外側へずれます。 接地点が足から遠くなるほど、シューズを横へ倒そうとする力も大きくなります。 さらに、シューズの中で足が前方へ滑ると、人の踵がシューズの中で浮き、斜めに動きやすくなります。
大きなシューズを靴ひもだけで固定すると、足の動きが不安定になります
サイズの大きなシューズでは、足とアッパーの間に余りが生まれます。 その余りを靴ひもだけで強く締めて固定すると、足の甲は押さえられていても、踵や前足部がシューズの中で動くことがあります。 また、シューズのベロが丸まっていたり、足の甲に沿っていなかったりすると、足の固定位置も変わります。 足がシューズの中心に収まっていなければ、踵の角が地面へ触れた瞬間に、シューズが予想しない方向へ傾きます。
幅の広い厚底シューズでは、踵の張り出し方を確認します
近年のランニングシューズには、安定性を高めるため、踵やソールを横へ広く張り出したものがあります。 広いソールには、身体を支える面積を増やせるという利点があります。 一方、踵の外側へ大きく張り出した部分が最初に地面へ触れると、その角がシューズを傾ける支点になることがあります。 特に体重が軽い人や子どもでは、クッション材が大きく変形する前に角が接地し、シューズの傾きが目立つことがあります。 厚底や幅広のシューズを選ぶときは、立ったときの安定感だけでなく、歩いたときや走ったときに、踵がどちらへ転がるかを確認します。
新品のシューズは、短い距離から使いながら接地の変化を確認します
新品をいきなり長距離やレースで使用しません
新品のシューズは、クッション材やアッパーがまだ足の動きに馴染んでいません。 同じ製品でも、しばらく履いたシューズと新品では、着地したときの変形や転がり方が異なります。 最初は歩行や短いジョギングから使用し、少しずつシューズに当たりをつけます。 その間に、足首や膝が横へ流れないか、踵が不自然な方向へ転がらないかを確認します。
靴を慣らしても傾きが変わらない場合は、サイズと形状を見直します
シューズに当たりをつけることは、すべての角当たりを解決する方法ではありません。 足より大きすぎる、踵の張り出しが走り方と合わない、足がシューズの中で動くといった問題は、履き続けても変わらないことがあります。 短い距離でも足首や膝へ違和感が出る場合は、無理に履き慣らそうとせず、サイズとシューズの形状を確認します。
指の付け根でソールが曲がるか確認します
歩行やランニングでは、踵が接地したあと、身体が前方へ移動し、最後に指の付け根付近で足裏が曲がります。 シューズにも、指の付け根付近が曲がりやすくなる溝や屈曲位置があります。 この部分が足の曲がる位置と合わなかったり、ソールがほとんど曲がらなかったりすると、シューズ全体が下駄のように一枚の板として動きます。 前足部で曲がらないシューズでは、踵から始まった傾きを途中で修正しにくくなります。
走り方とシューズの設計には相性があります
同じシューズでも、すべての人が同じ場所へ着地するわけではありません。 接地位置、足の振り出し方、身体の傾き、体重によって、シューズの変形する場所は変わります。 評判のよいシューズでも、自分の走り方と合わなければ、踵の角が強く当たることがあります。 シューズを替えた直後から痛みが現れ、元のシューズへ戻すと変化する場合は、筋肉だけでなくシューズとの相性も確認します。
まとめ|膝やすねの痛みでは、シューズが転がる方向も確認します
シューズの角当たりとは、人の踵が地面へ着く前に、シューズの踵部分にある外側や後方の角が接地する現象です。 角を支点にシューズが横へ傾くと、踵、足首、すね、膝へねじれが伝わることがあります。 確認するのは、 ・シューズの踵が足より大きく張り出していないか ・足に対してサイズが大きすぎないか ・シューズの中で足が前方へ滑っていないか ・ベロとアッパーが足に沿っているか ・踵の外側の角から接地していないか ・指の付け根付近でソールが曲がるか ・新品をいきなり長距離で使用していないか です。 膝の裏やすねの外側に痛みがあるからといって、筋肉だけに原因があるとは限りません。 ストレッチやマッサージをしても変化しない場合は、シューズがどこへ接地し、どちらへ転がっているかを確認します。
👉️ヒールロッカーとは|踵を支点に身体が前へ進む仕組み
👉️足の痛みを、足部の構造と動きから考える
執筆・検証者:近藤祐司
足の痛み、シューズ、靴下、歩き方や走り方の問題について、
構造と動作分析の視点から情報を発信しています。
「痛い場所」だけを見るのではなく、
なぜそこに負担が集まるのか。
その仕組みを、実例や観察をもとに解説しています。
1995年に静岡県富士宮市で若葉治療院を開業。
一般治療に加え、スズキ浜松陸上部、競輪選手、三菱電機スケート部など、プロスポーツ現場でのサポート実績を積む。
医療と運動の現場から、日用品の機能性を再定義する活動を開始。
※本記事は、足元の構造や動作の変化を観察・解説するものです。
特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。
強い痛みや歩行困難がある場合は、医療機関へご相談ください。