滑液包炎


シューズを履いて走ると、足の甲が痛む。

靴ひもが当たる部分が腫れたり、押すと痛かったりする。

そのような症状では、腱の周囲にある滑液包へ負担が加わっていることがあります。

ランニングで起こる滑液包炎は、練習量だけでなく、靴ひもの形状、摩耗、ねじれ、紐の通し方、シューズのサイズやワイズも関係します。

このページでは、滑液包の役割と、足の甲へ圧力が集まるシューズの条件を解説します。

滑液包は、関節周辺の摩擦と衝撃をやわらげる小さな袋です

腱は筋肉と骨をつなぎ、靱帯は骨と骨をつないでいます。

腱は、筋肉の力を骨へ伝える丈夫な結合組織です。

腱の周囲には、腱の動きを滑らかにする腱鞘や、摩擦と衝撃をやわらげる滑液包があります。
筋肉と骨をつなぐ腱と、その周囲で摩擦を減らす組織の位置関係を示した滑液包炎の解説画像
滑液包は、液体の入った小さな袋です。

腱と骨の間、骨と靱帯の間、骨の隆起部と皮膚の間など、動作によって摩擦が起こりやすい場所にあります。

隣り合う組織どうしが直接こすれるのを防ぎ、関節や腱を滑らかに動かす役割があります。

滑液包に刺激が繰り返されると、急性または慢性の炎症が起こります

滑液包炎には、急性のものと慢性のものがあります


滑液包へ物理的な刺激が加わると、急性または慢性の炎症が起こります。

関節を動かしたときの痛み、押したときの痛み、腫れなどが現れることがあります。
身体の摩擦が起こりやすい場所にある滑液包と、炎症が起きる位置の例を示した解説画像1
身体の摩擦が起こりやすい場所にある滑液包と、炎症が起きる位置の例を示した解説画像2
身体の摩擦が起こりやすい場所にある滑液包と、炎症が起きる位置の例を示した解説画像3
身体の摩擦が起こりやすい場所にある滑液包と、炎症が起きる位置の例を示した解説画像4
身体の摩擦が起こりやすい場所にある滑液包と、炎症が起きる位置の例を示した解説画像5
身体の摩擦が起こりやすい場所にある滑液包と、炎症が起きる位置の例を示した解説画像6
慢性的な滑液包炎には、痛風や感染症が関係するものもあります。

一方、ランニングやスポーツで起こる滑液包炎では、シューズや靴ひもから繰り返し圧迫を受けたことによる急性の症状を多く見かけます。

ランニングの滑液包炎は、使いすぎだけでなくシューズの圧迫も確認します

滑液包炎の原因として、過度なトレーニングによるオーバーワークが挙げられます。

しかし、いつもと同じ練習量でも痛みが現れたり、片側の足だけに症状が出たりすることがあります。

そのような場合は、運動量だけでなく、痛む部分へシューズからどのような圧力が加わっているかを確認します。
足の甲の滑液包炎では、

・靴ひもの形状

・靴ひもの摩耗やねじれ

・靴ひもの通し方

・シューズのサイズ

・シューズのワイズ

を確認します。

靴ひもの形状と状態によって、足の甲への圧力が変わります

楕円形や丸形の靴ひもは、圧力が一部に集まることがあります


靴ひもの断面には、平形、楕円形、丸形があります。

足の甲に痛みがある方では、楕円形や丸形の靴ひもが、腱や滑液包の上を強く押さえていることがあります。

圧迫が気になる場合は、力が広い面へ分散される平紐へ交換して確認します。
足の甲へ広い面で接する平形のシューレースを示した画像
足の甲へ接する面が平紐より狭い楕円形のシューレースを示した画像
足の甲へ線状の圧力が加わりやすい丸形のシューレースを示した画像
左から、平紐、楕円紐、丸紐です。
平紐、楕円紐、丸紐が足の甲へ接したときの圧力の違いを比較した画像

古くなった靴ひもは、足の変化へ追従しにくくなります


ランニング中の足は、接地や蹴り出しに伴って形が変わります。

靴ひもには、その変化に合わせて伸び縮みし、シューズのアッパーを足へ沿わせる役割があります。
ランニング中に変化する足の形へ、靴ひもとシューズのアッパーが追従する仕組みを示した画像
古くなり、伸びきった靴ひもは、足の変化へ追従しにくくなります。

その結果、足の甲の一部が強く押さえられたり、シューズの中で足が動いたりすることがあります。

靴ひもは消耗品です。伸縮性が失われたときは交換します。

靴ひものねじれは、圧力を一か所へ集中させます


平紐がねじれると、足の甲へ接する面が細くなります。

本来は広い面で受けるはずの力が一か所へ集まり、腱や滑液包を押さえることがあります。
平らな状態でシューズへ通された靴ひもと、足の甲へ広く接する状態を示した画像
ねじれた靴ひもが足の甲へ細い面で接し、圧力が集中する状態を示した画像
摩耗して伸縮性が低下した靴ひもと、ねじれや傷みを確認するための比較画像
ねじれている靴ひもは、一度すべて外して平らな状態へ戻します。

傷みが強い場合や、ねじれた形が戻らない場合は、新しい靴ひもへ交換します。

靴ひもの通し方によって、腱を押さえる位置が変わります

パラレルでは、靴ひもが足の甲を横から押さえることがあります


パラレルやシングルスでは、靴ひもが足の甲を横方向へ通ります。

足の形や痛む位置によっては、横へ通った靴ひもが腱の上を直接押さえることがあります。

このページでは、スポーツシューズの紐通しには、オーバーラップまたはアンダーラップを基本として考えます。
パラレル
靴ひもを左右へ平行に通し、足の甲を横方向から押さえるパラレルの紐通しを示した画像
オーバーラップ
靴ひもを外側から内側へ通して交差させるオーバーラップの紐通しを示した画像
アンダーラップ
靴ひもを内側から外側へ通して交差させるアンダーラップの紐通しを示した画像

最後の穴の通し方で、結び目がシューズのベロを押さえることがあります


次の画像は、足の甲の滑液包炎を訴えて来院した高校生のシューズです。

痛みがあった左側のシューズだけ、最後の穴へ靴ひもを上から下へ通していました。
滑液包炎の痛みがあった左足と右足のシューズで、最後の穴の靴ひもの通し方を比較した画像1
滑液包炎の痛みがあった左足と右足のシューズで、最後の穴の靴ひもの通し方を比較した画像2
最後の穴へ靴ひもを上から下へ通し、結び目がシューズのベロを押さえる位置を示した画像
最後の穴へ靴ひもを上から下へ通すと、最初の結び目がシューズのベロを直接押さえます。

結び目の下にあるベロを介して、足の甲の腱や滑液包へ強い圧力が加わることがあります。
靴ひもの結び目がシューズのベロを押さえ、その下にある足の甲へ圧力が加わる仕組みを示した画像
ベロを直接押さえる通し方は、シューズの固定力を高める目的で、短距離走などに使われることがあります。

一方、長時間走るランニングでは、足の甲へ圧力が集中していないかを確認します。

サイズとワイズが合わないシューズは、足の甲を強く締める原因になります

大きすぎるシューズは、靴ひもを強く締める原因になります


シューズによる足の甲の締め付けは、小さいシューズだけで起こるものではありません。

実際には、大きすぎるシューズを履いている方にも多く見られます。
足より大きなシューズを履き、シューズ内で足が動きやすくなっている状態を示した画像
サイズの大きいシューズでは、シューズの中で足が動きます。

その動きを止めようとして靴ひもを強く締めると、足の甲へ圧力が集中します。
サイズの大きいシューズを固定するために、靴ひもを強く締めて足の甲を圧迫している状態を示した画像
シューズは、靴ひもだけで足を固定するものではありません。

アッパーやサイドマテリアルを足へ沿わせ、シューズ全体で足を包むように履きます。

ワイズが大きすぎると、余ったベロが足の甲を押さえます


シューズのワイズは、単純な横幅ではなく、足囲の周径を表します。

足長だけでなく、足囲に合ったシューズを選ぶことも大切です。
足の親指側と小指側を通る周径として、シューズのワイズを計測する位置を示した画像
ワイズが大きすぎるシューズでは、アッパーやベロが余ります。

靴ひもを締めると、余ったベロにしわが寄り、そのしわが足の甲の腱や滑液包を押さえることがあります。
ワイズが大きいシューズで余ったベロにしわができ、足の甲へ当たる状態を示した画像1
ワイズが大きいシューズで余ったベロにしわができ、足の甲へ当たる状態を示した画像2
ワイズが大きいシューズを締めたことで、左右の鳩目が近づき足の甲が圧迫される状態を示した画像
靴ひもを締めたときに、左右の鳩目が閉じきるように近づく場合も、ワイズが大きすぎる可能性があります。

足の甲が痛むときは、紐の締め方だけでなく、シューズそのもののサイズとワイズまで確認します。

まとめ|足の甲の滑液包炎では、靴ひもとシューズの接触を確認します

滑液包は、腱や骨、皮膚などがこすれやすい場所にあり、摩擦と衝撃をやわらげています。

足の甲へシューズから圧力が繰り返し加わると、滑液包や腱の周辺に痛みが現れることがあります。

ランニングで足の甲が痛むときは、練習量だけでなく、

・靴ひもが平らな状態で通っているか

・古くなり、伸縮性を失っていないか

・靴ひもがねじれていないか

・痛む場所を横方向から押さえていないか

・最後の穴へどちらから通しているか

・シューズのサイズが大きすぎないか

・ワイズが足囲に合っているか

を確認します。

痛みが現れた場所と、圧力を作っている原因を一緒に見ることで、足の甲へ負担が集まる条件が分かりやすくなります。


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