走ると、膝の外側が痛くなる。 走り始めは痛くないのに、一定の距離を過ぎると同じ場所が痛くなる。 このような症状が続くときに考えられるのが、腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)です。 腸脛靭帯炎は「ランナー膝」とも呼ばれ、ランニングや自転車など、膝の曲げ伸ばしを繰り返す競技で起こります。 このページでは、腸脛靭帯炎の症状と、膝の外側に痛みが起こる仕組みを解説します。

腸脛靭帯炎では、走ると膝の外側に痛みが現れます

初期は、ランニング中や走り終わったあとに痛みます
初期には、ランニング中や走り終わったあとに、膝の外側へ痛みを感じます。 走り始めは痛くなくても、一定の時間や距離を過ぎると痛みが現れることがあります。 運動を中止すると痛みが軽くなるため、そのまま練習を続けてしまうこともあります。
進行すると、歩行や階段でも痛むようになります
症状が進むと、ランニングを中止しても痛みが残るようになります。 階段を下りる、膝を曲げ伸ばしする、長時間歩くといった日常動作でも痛みを感じることがあります。 強い痛みを避けるために、膝を十分に曲げず、伸ばしたまま歩くようになる場合もあります。
膝が大きく腫れている、膝が引っかかる、力が抜ける、安静にしていても痛む、体重をかけられない場合は、腸脛靭帯炎以外の損傷も考えられます。 運動を中止し、整形外科で確認してください。
腸脛靭帯炎は、筋肉の硬さだけで起こるものではありません
腸脛靭帯炎の説明では、大腿筋膜張筋や大殿筋が硬くなり、腸脛靭帯を強く引っ張ることが原因として挙げられます。 筋肉の緊張によって腸脛靭帯へ加わる張力が高くなることは、確認したい要素の一つです。 しかし、筋肉の硬さだけで症状のすべてを説明できるわけではありません。 ランニング中に膝や股関節がどの方向へ動いているか、身体が左右へどの程度揺れているか、片側へ荷重が偏っていないかも確認します。
片足だけに痛みが出るときは、左右の動きと荷重の違いを確認します
腸脛靭帯炎は、左右両方ではなく、片側の膝だけに起こることがあります。 これは、筋肉の柔らかさだけではなく、左右の足へ加わる負荷や動き方に違いがあることを示しています。 たとえば、 ・片側だけ膝が内側へ入る ・片側だけ膝や大腿部の内旋が大きい ・骨盤が片側へ落ちる ・上半身が片側へ大きく傾く ・片側の足だけ接地時間が長い といった違いです。 左右差があると、同じ距離を走っていても、一方の膝の外側へ負担が集中します。
ニーインや膝のねじれは、腸脛靭帯周辺の圧迫を強めることがあります
ランニングでは、足が地面に着いたあと、膝が曲がりながら身体の重さを受け止めます。 このとき、 ・膝が内側へ入る ・大腿部や膝が内側へ回る ・骨盤が反対側へ下がる ・上半身が接地した足側へ傾く といった動きが重なると、腸脛靭帯の張力や、その深部にある組織への圧迫が大きくなることがあります。 跳ね上げた足のつま先が外を向いている場合も、走行中に下肢でねじれが起きていないかを確認する材料になります。 ただし、ニーインやつま先の向きだけで、腸脛靭帯炎の原因を断定することはできません。 実際の走行動作と、痛みが始まる時間や距離を一緒に確認します。
動きの違いを動画で確認します

腸脛靭帯は、太ももの外側を通って膝を支える組織です
腸脛靭帯は、太ももの外側にある幅の広い腱膜状の組織です。 上部では大腿筋膜張筋や大殿筋とつながり、下部では脛骨外側のガーディ結節などへ付着しています。 ランニング中には、股関節や膝の外側を支え、骨盤や大腿部が大きく崩れないように働きます。
膝が約20〜30度曲がると、腸脛靭帯の深部が圧迫されます
以前は、膝を曲げ伸ばしするたびに、腸脛靭帯が大腿骨外側の出っ張りを前後に乗り越え、摩擦を起こすと説明されてきました。 しかし、腸脛靭帯は大腿骨にも固定されているため、一本のひもが骨の上を前後に滑るように動くわけではありません。 膝が約20〜30度曲がると、腸脛靭帯の前方と後方にある線維の張力が変わり、腸脛靭帯が骨側へ押しつけられます。 その結果、腸脛靭帯と大腿骨外側の間にある、脂肪や結合組織が繰り返し圧迫されます。 現在は、この圧迫や衝突によって膝の外側に痛みが起こるという考え方が重視されています。

長距離になるほど、同じ場所への圧迫が繰り返されます
ランニングでは、一歩ごとに膝の曲げ伸ばしが繰り返されます。 短い距離では問題がなくても、走る時間が長くなると、同じ場所へ加わる圧迫の回数も増えていきます。 さらに疲労によって骨盤や体幹が揺れ始め、膝の内旋や内側への移動が大きくなると、途中から痛みが現れることがあります。 距離だけではなく、 ・走る速度 ・下り坂 ・傾いた路面 ・同じ方向で走り続けるトラック ・急に増やした練習量 なども確認します。
予防と再発防止では、痛みが出る動作と条件を確認します
腸脛靭帯炎を予防するときは、単に腸脛靭帯を伸ばすだけではなく、痛みが出る条件を確認します。 確認する項目は、 ・痛みが始まる時間や距離 ・練習量を急に増やしていないか ・下り坂や傾いた路面を多く走っていないか ・片側だけ膝が内側へ入っていないか ・骨盤や体幹が片側へ傾いていないか ・シューズのサイズや摩耗 ・足がシューズの中でずれていないか です。 股関節や体幹の筋力だけではなく、実際に片足で立ったとき、歩いたとき、走ったときの動きを確認します。
靴下を替えたときの動きも比較できます
靴下によって足指の位置や足部の安定性が変わると、片足立ちや膝の動きが変わることがあります。 ラクちんソックスだけで腸脛靭帯炎を予防できると断定することはできません。 ただし、普段の靴下と履き替えて片足立ちや走行動作を比較すると、足元が膝の動きに影響しているかを確認できます。
まとめ|膝の外側だけでなく、片足で支えたときの動きを確認します
腸脛靭帯炎は、ランニング中に膝の外側へ痛みが現れる障害です。 以前は、腸脛靭帯が大腿骨外側の骨を前後にこすることで炎症が起こると説明されてきました。 現在は、膝が約20〜30度曲がったときに、腸脛靭帯の深部にある脂肪や結合組織が繰り返し圧迫される仕組みが重視されています。 痛みが片側だけに現れるときは、 ・膝の内旋やニーイン ・骨盤の傾き ・体幹の左右への揺れ ・接地時間や荷重の左右差 ・練習量や走る路面 ・シューズや足元の状態 を確認します。 筋肉の硬さだけを見るのではなく、走るたびに膝の外側へ負担が集中する理由を探すことが、再発を防ぐ入口になります。
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