観察記録|ラテラル・スラスト(膝の外方動揺)
今回いただいた相談です。
「歩くと膝の外側が痛い。左だけ、小指球のタコも気になる」
同一条件で、素足と靴下着用の歩行を比較・観察しました
ラテラル・スラスト(Lateral Thrust)とは
通常、膝は──
片足で体重を支える立脚期において、横へ逃げる動きは起きません。

わずか1cmほどの移動。
しかも、体重が乗る瞬間に起きるため、見落とされることが多い動きです。
片足で体重を支える立脚期に、膝が横に揺れる、あるいは外側へ逃げるように動く。
この現象は、ラテラル・スラスト(Lateral Thrust)と呼ばれます。
現場では「ニーアウト」と表現されることもあります。
ラテラル・スラストは、膝の変形を進行させる要因になります
ラテラル・スラスト(Lateral Thrust)は、歩行時に膝が外側へガクッとずれる横揺れ・外側動揺で、主に変形性膝関節症(O脚)の人に見られます。
荷重時に急激な内反ストレスがかかるため、膝の痛みや変形を進行させる要因となります。
「距離」よりも「動きの質」を見ます
ラテラル・スラストの本質は、移動距離そのものよりも、体重が乗った瞬間に「急激に」「外側へ」ぶれるという動態にあります。
わずか1cmでも、歩くたびに繰り返されます
膝が1cm外にぶれるたびに、膝の内側には強い「圧縮力」、外側には「牽引力」が加わります。
この微小な繰り返しが、膝の軟骨や半月板などの摩耗を早める要因になります。
「靴下を履いた時だけ出る」というこのケースでは、靴下による足元の条件変化も観察すべき要素になります。
筋力だけでは説明できない動きがあります
1.「出力」だけでなく「入力」の条件を見る
どんなにスクワットで重い重量を挙げられる筋力があっても、足底からのセンサー(受容器)が「傾き」を感知すると、脳はその情報に応じて運動を調整します。
つまり、足元の条件が変われば、身体が選択する動きも変わります。
2.コンマ数秒の「タイミング」のズレ
歩行時の接地は、意識して筋肉を動かして調整するには短い時間です。
ラテラル・スラストは、その一瞬のタイミングで起こります。
3.骨格や足元の条件も動きに影響します
骨格(膝の軸)がすでにO脚傾向にある場合、筋力だけでその物理的なベクトルを打ち消すには限界があります。
また、疲労や装備(靴・ソックス)によっても、動き方は変化します。
変形性膝関節症の方でも、立脚期に膝の外側動揺が見られます
実際に、変形性膝関節症の方の歩行を観察すると──
立脚期において、膝の外側への揺動が確認できます。
どちらも、同じ条件での歩行です。

わずか1cmほどの動き。
しかも、体重が乗る一瞬の中で起きるため、目で見ても分かりにくいことが多い。
だから──
見えないものは、老化と呼ばれてしまうことがある。
……でも、本当にそれだけだろうか。
靴下を脱ぐと消えるなら、それも観察する条件のひとつです
ラテラル・スラスト(膝の横ブレ)の主な原因は、変形性膝関節症によるO脚変形や、それを支える筋肉、とくに中殿筋や内側広筋の筋力低下。
……そう説明されることが多い。
ただ──
靴下を脱いだときには出ないのに、履いたときだけ現れるなら。
それもまた、条件のひとつと考えるほうが自然です。
今回の観察から見えたこと
今回の相談は、「歩行時に膝の外側が痛む」「左足の小指球にのみタコができる」というものでした。
歩行を比較すると、片足で体重を支える瞬間に、膝が外側へ移動するラテラル・スラストが観察されました。

このケースでは、素足と靴下着用時で動きが変化しました。
そのため、筋力だけを見るのではなく、足元の条件が変わったことで足部構造や歩行がどう変化したのかも観察しています。

足元の条件が変わることで、足部構造や膝の動きがどのように連動するのか。
その全体像は、まぼろし工房の足部工学理論で詳しく解説しています。
